日本病院薬剤師会 関東ブロック学術大会 第49回
日時:019年8月24日(土)~25日(日) 会場:山梨県 甲府記念日ホテル
〈ポスター発表タイトル〉
直接経口抗凝固薬からワルファリンへの切り替え時の提言と服薬説明により
円滑な切り替えができた症例
山梨厚生病院 薬剤室 朝倉 寛達
【症例】66歳女性、#1うっ血性心不全、#2心房細動/発作性心房粗動。入院5日前より、呼吸困難感を自覚。呼吸困難が現れた為、搬送入院となる。#2でアピキサバン投与開始となり薬剤管理指導に入った。入院12日目、心臓カテーテル検査にて僧帽弁狭窄兼閉鎖不全および左前下行枝と左回旋枝に狭窄部位が認められた。僧帽弁狭窄症のためアピキサバンを中止し、翌日からワルファリンカリウム(以下、ワルファリン)への変更指示が出た。また、ワルファリン開始と下痢症状の発現時期が重なり、患者は副作用を心配し拒否感を抱いていた。
【問題点と対応】当初アピキサバン中止とワルファリン開始を同時に行う指示だった。しかし、ワルファリンの導入初期は、一過性の過凝固状態となることがあるため併用が必要であり、その旨を医師に説明し、PT-INRの治療域が下限を超えるまで2剤併用した。また、患者からは「ワルファリン開始から下痢になった」と訴えがあり、拒薬となると治療困難になる可能性があった。服用中の下痢は、ビタミンK吸収阻害により、ワルファリンの作用増強やコントロール不良が懸念された。今回の下痢は、検査時に使用した抗生剤投与等による影響も考えられた為、整腸剤投与および傾聴による不安解消と拒薬の回避に徹した。
【考察】この症例は、僧帽弁狭窄症の診断結果を受け、適切な2剤併用と切り替えタイミングを医師に提案し、7日間併用を経て切り替えが行われた症例である。ワルファリンの十分な抗凝固効果は36~48時間後に得られることから、用量調整時期を加味すると概ね順調な切り替えが行えたと思われる。また、下痢症状は、ワルファリンの投与前日頃よりあったため、ワルファリンとの関連は低かったが、患者のワルファリンに対しての不信感が高まっており、早期介入し傾聴を重ね対応することで、拒薬を回避して服薬を継続することができた。
〈発表の示説を終えた感想〉
今回の薬剤管理指導体験では、医薬品の安全性にかかわる薬剤師の存在意義や患者様との対話を取りながら、安心して薬を飲むことができる服薬説明の重要性を学ぶことができました。
学会当日は、発表を熱心に見られている先生がいました。その先生に何か質問があるか尋ねたところ、「いいえ、勉強させてもらっています」と返事が返ってきました。当日は300題近くのポスター発表が合ったにもかかわらず、その中から自分の発表を見に来ていただいたようです。自分は、嬉しさと同時に発表することの影響力の高さを感じました。これからも薬剤師として働きながら、気付きや発見があった場合には、今回の学会のように世の中に発信をして、社会へ貢献していきたいと思います。