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睡眠時無呼吸症候群について

呼吸器内科 診療部長 西川圭一

 

現在日本では、中年男性の約4%(女性では0.5~2%)が睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)にかかっていると言われています。
さらに生活リズムの乱れ・不健康な食生活・肥満・運動不足になりがちなライフスタイルなどにより、患者さんは今後も増加すると予想されています。
また高血圧・不整脈・脳卒中などの疾患や、夜間突然死との関連も指摘されているのです。
さらに仕事や学業の成績の低下・交通事故の危険性の増加などは、重大な社会的問題にもなっています。

 

このようにSASは多くの合併症を引き起こす一種の生活習慣病であるといえます。
疾患の定義は「一晩7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸があり、そのいくつかはnon-REM期にも出現するもの、または無呼吸が1時間に5回以上」です。
無呼吸とは「10秒以上の気流(肺に向かう空気の量)停止」をいい、疾患の重症度判定には無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index = AHI、睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数)を用います。
低呼吸とは「気流が半分以上低下し、同時に酸素飽和度が4%以上低下するか、あるいは睡眠から覚醒すること」をいいます。

 

SASの病態の多くは空気の通り道(気道)が塞がる又は狭くなることによって起こる閉塞性SASで、眠ると咽頭の筋肉がゆるみ、ふさがってしまい息が止まるのです。
眠ったとき咽頭がふさがらないまでも、咽頭が狭くなるといびきが出ます。さらに咽頭がふさがってしまうと息が止まり、閉塞性SASになるわけです。
ですから、いびきをかく人は閉塞性SASの可能性があり要注意です。肥満がある人は気道も狭くなっており、閉塞性SASが多いのですが、顎が小さい人、扁桃腺が大きい人、高齢者などではたとえ肥満がなくても閉塞性SASになりやすいといわれています(閉塞性SAS以外にも、うっ血性心不全や神経疾患でみられる中枢性SASもあります)。

 

SASの症状は、いびき、家人などからの無呼吸の指摘(数分間止まっていることも稀ではありません)、日中の眠気、倦怠感、頭重感、夜間頻尿などの様々な症状のほか、高血圧、心不全、心血管障害、夜間突然死、糖尿病、脳卒中、認知障害などの疾患のハイリスクとなっており、また健常者の数倍も交通事故を起こしやすいことが知られています。

 

検査の流れ
図1 検査の流れ

図1にSAS検査・治療の流れを示しました。

簡易検査でSASの重症度を調べ、AHIが40以上であれば重症SASと診断し、CPAP(持続陽圧呼吸療法)治療を選択、AHIが40未満であれば入院しポリソムノグラフイー(PSG)を行います。
PSGは睡眠中の脳波と心電図、胸部・腹部の動き、鼻からの空気の流れ、動脈中の酸素飽和度などを連続して記録し、正確に無呼吸の状態を診断します。
この結果AHIが20以上であればCPAPの適応となります。

 

CPAP療法はCPAP装置(写真1)からホース、マスクを介して空気を気道に送り、常に圧力をかけて空気の通り道が塞がらないようにするものです。
CPAP以外の治療法として、口腔内装置(マウスピースで下あごを前方に固定して空気の通り道を開く方法)や、気道閉塞の原因がアデノイド肥大や扁桃肥大である場合には手術療法が選択される場合もあります。
肥満が原因でSASになっている場合は減量し肥満を解消することも大切です。
写真1

ぜひ一度表1のEpworthの眠気テストをお試しいただき、いびきや眠気が気になる方、ご自分の睡眠に不安を感じる方は健康維持のためにもお早めに呼吸器内科にご相談ください。

CPAP治療を始められた多くのSAS患者さんから、「頭がすっきりして人生が変わった」、「仕事に集中できるようになった」、「いびきがなくなって家族に迷惑がかからなくなった」などのうれしい感想をいただいています。

 

表1 Epworth の眠気テスト
あなたは以下のような状況でどのくらい眠気を自覚しますか?
表1 Epworth の眠気テスト
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