【疾患名】
【病態】
肺がんは肺から発生した腫瘍であり、日本で最も重要な悪性疾患の1つです。国立がんセンターの統計によると、2019年時点で年間126,548人の方が肺がんと診断されています。臓器別では男女合わせると大腸がんに次ぐ2位であり、今後も増加すると予測されています。また喫煙が発症のリスクとなるため、禁煙は発症予防につながります。
【症状】
日本では健康診断や、他の疾患を治療中に胸部レントゲンやCT検査で偶然発見されることが多いため、発見時点で無症状の方がほとんどです。しかし、進行すると頑固な咳や血痰などの症状が出現する場合があるので、そのような症状を認める方は早めに医療機関受診をご検討ください。
【検査】
胸部単純レントゲン撮影、CT撮影は必須の検査です。肺がんと確定診断するには腫瘍の一部である『組織』の採取が必要になります。組織を採取する方法としては、気管支鏡検査やCTガイド下生検などの方法があります。しかし、これらの方法で組織の採取が難しい場合は、手術によって腫瘍の一部(または全て)を切除する方法をご提案します。さらに病期(ステージ)を推定するためにMRI、PET検査、治療効果判定のために腫瘍マーカー測定が行われます。
【治療法】
肺がんの治療は一般に病期(ステージ)に基づいて決定されます。
ステージI:腫瘍が小さく転移のない早期段階であり、肺がん手術を受ける方の7割以上がこの段階です。手術だけでも十分根治が見込めます。腫瘍の大きさによっては、追加の抗がん剤治療をお勧めする場合があります。手術方法は、『肺葉切除』が中心となりますが、最近の研究で切除範囲を縮小して肺の温存に努める『区域切除』も肺葉切除と同等の治療効果を得ることがわかりました。『区域切除』は肺葉切除に比べてより高い技術を要求されますが、当院では積極的に行っています。詳しくは『肺区域切除術について』の項をご参照ください。
ステージII:腫瘍がある程度大きいか、肺に近いリンパ節に転移が疑われる段階です。この段階も手術が治療の中心となり、標準手術は肺葉切除です。術後に追加の抗がん剤治療をお勧めします。
ステージIII:腫瘍が大きく、肺から遠いリンパ節に転移が疑われる段階です。手術のみでは根治が難しいこともあり、放射線治療や薬物治療(抗がん剤治療)を組み合わせて、最適な治療を検討します。
ステージIV:他の臓器に腫瘍の転移が疑われる段階です。治療は全身に効果のある薬物治療が中心となります。肺がんは現在、薬物治療の研究・開発が最も盛んに行われている分野であり、有効な新規薬剤が次々に登場しています。その中で、患者さんごとに効きやすい薬剤を選んで使用する、オーダーメイド治療が進んでいます。薬剤選択には豊富な組織量が必要であり、組織採取を目的とした手術が治療の一端を担います。また最近では薬物治療や放射線治療の結果、病変が肺のみとなり、取り切れる可能性がある場合は手術をご提案することもあります。
上記はあくまで基本的方針であり、患者さんの体力や生活などを総合的に判断し、内科医をはじめとした他科医師と連携しながら、患者さんご自身・ご家族とよくご相談したうえで治療方針を決定して参ります。