血管外科 伊從 敬二
2013年1月に当院で下肢静脈瘤に対する血管内レーザー治療(以下、レーザー治療)を導入しました。
本治療法は以前は自費診療で行われていましたが、2011年1月に保険収載され、一般に行っている治療法と同様に保険を使って治療が受けられるようになりました。
レーザー治療はメスを使わずに行うことが可能であるため、低侵襲な治療として全国に普及しつつあります。
下肢静脈瘤について
下肢の表面の静脈がうねるようにふくらんでくる病気です。静脈には多数の逆流防止弁がありますが、この弁の機能が悪くなり血液が逆流してうっ滞することが、静脈瘤の原因の一つと言われています。
下肢の表在静脈には、大腿内側~下腿を縦に走る“大伏在静脈”と下腿後面を縦に走る“小伏在静脈”があります。これらのいずれかの静脈に逆流が起こり拡張し蛇行するのが静脈瘤で、静脈瘤はその末梢の枝にも広がります。
女性に多く、加齢とともに頻度が増します。立ち仕事の人に多い傾向があり、女性では妊娠や出産をきっかけに発症することがあります。
症状として、コブができるといった美容的な問題のほかに、足が重い、痛い、かゆい、つるなどの症状があります。
湿疹や色素沈着、潰瘍などの皮膚症状は難治性のことがあります。一般に命に関わることはありませんが、自然には治癒しません。
血管内レーザー装置 “ELVeS 1470” |
治療について
下肢静脈瘤の主な原因は前述の“大伏在静脈”や “小伏在静脈”の逆流であるため、従来からこれらを引き抜くストリッピング術が根治的として行われてきました。
新たに登場したレーザー治療はこれらの静脈を焼き閉じるカテーテル治療で、より低侵襲でストリッピング術とほぼ同等の効果があるとされています。
その他に、補足的な治療法として、薬剤を静脈瘤内に注入して固まらせる硬化療法や、進行を予防する目的の医療用の弾性ストッキングの着用等があります。
レーザー治療の詳細について
局所麻酔を行い、超音波で確認しながら“大伏在静脈”ないし“小伏在静脈”にカテーテルを挿入します。
静脈の周囲にも特殊な局所麻酔を行った後に、光ファイバーをカテーテル内に通し、先端部からレーザーを静脈内に照射しながらゆっくりと光ファイバーを引き抜くことにより、静脈を中から焼いて血管をふさぎます。
これにより主な静脈の逆流はなくなり、うっ滞も改善します。末梢の枝が静脈瘤として残ることがありますが、これに対しては約 2mm の切開で静脈瘤の切除を行います(stab avulsion法)。
手術時間は準備を含めて1時間ほどで、手術直後から歩行ができます。
現在、当院では一泊の入院で治療を行っています。個人差がありますが、術後に一時的にレーザー治療に特有な痛みやつっぱり感、皮下出血が起こることがあります。また、最低1カ月間は弾性ストッキングの着用を勧めています。
レーザー治療の功績
従来の血管を引き抜く手術に抵抗があり治療を先送りにしていた静脈瘤の患者様でも、低侵襲なレーザーであれば治療を希望する傾向にあります。
言いかえれば、レーザー治療の導入により、より多くの患者様が治療を受けられるようになったと言えます。
昨年まではレーザー治療の希望者は主に東京で治療を受けていましたが、当院でレーザー治療を開始すると同時に県内全域から患者様が殺到しました。
これは、多くの患者様が静脈瘤に悩みつつも、治療をためらっていたことを物語っています。当院でのレーザー治療導入からの 10 ヶ月間で、99 例、141 肢の治療を行いましたが、問題となる合併症もなく、いずれも順調に経過しています。
今後も多くの患者様により適切でスムーズな治療を提供していきたいと考えています。
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