【疾患名】
【病態】
乳腺は小葉および乳管から出来ています。乳がんはその上皮細胞ががん化して発生します。小葉から発生するがんは10数パーセントで多くは乳管上皮から発生します。一口に乳がんと言っても様々なタイプがあり、病理診断名でも10数種類以上あります。そのそれぞれが特徴が異なっており、またホルモン感受性も患者様ごとで異なっています。一般には腫瘤をなしてくることが多いのですが、乳管内に癌がとどまっている非浸潤性乳管癌などは腫瘤は形成されておらずマンモグラフィなどの検査でなければ発見できません。(最も早期の癌ですが)進行してゆくとリンパ節や肺、肝臓、骨、脳などに転移をしてきます。こうなってからでは根治は望めません。早期発見が重要です。
【症状】
多くは腫瘤を形成します。エクボ症状(エクボのようなひきつれが皮膚に出現する)が出現することもあります。多くの場合、痛みはほとんどありません。自己触診は大切です。
稀ですが血性乳頭分泌(赤かったり黒い液が乳頭から出るや乳頭のビラン(乳頭がジクジクする)などの症状が出現することもあります。
非浸潤癌はほとんど症状はありません。マンモグラフィ検診等で発見するしかありませんが最も早期の癌です。
月に一回の自己触診と年に一回のマンモグラフィまたはエコー併用検診を行っていればまずは早期で発見できると思います。
【検査】
視触診:しこりがあるかどうか、皮膚の所見、乳頭分泌などを診ます。
マンモグラフィ:乳房を圧迫して弱いX線で撮影します。
エコー:超音波で乳腺内の断層像をみます。
細胞診、針生検:気になる部分があれば局所麻酔をしたうえで針を刺入し細胞や組織をとる検査です。判定は病理医が行います。結果がわかるまで一週間くらいかかります。
MRI:磁気の力で体の内部を検査します。造影剤を使用します。体の中に金属(人工関節やペースメーカーなど)があったり入れ墨がある場合は検査できません。
マンモトーム生検:マンモグラフィの装置やエコーの装置を使用して気になる部分を特殊な針を用いて組織を採取し病理検査に提出します。
その他にCT検査など適宜おこないます。
【治療法】
手術、化学療法、内分泌療法、放射線治療が主な治療となります。患者様の病状に併せて組み合わせて総合的に治療を計画します。
手術:乳房温存治療と乳房切除があります。入院して全身麻酔下に行われます。最近は乳房温存治療が主流です。リンパ節も転移の可能性が少ない早期の病変の場合はセンチネルリンパ節生検といって一番転移しやすいリンパ節を調べるだけです。
化学療法:抗がん剤や分子標的薬を用いて治療を行います。手術前や手術後、再発した場合にも行います。
内分泌療法:ホルモン感受性のある癌だった場合に使用します。主に内服治療ですが注射剤を併用することもあります。比較的長期間にわたる治療になりますが副作用はあまり激しいものはありません。
放射線治療:乳房温存術式の場合に主に術後に残った乳腺に対して行われます。時にリンパ節転移や脳転移に対しても行われます。
その他乳腺の良性腫瘍(線維腺腫や葉状腫瘍)、乳腺炎などの治療も行っています。