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早期胃癌の治療-内視鏡的粘膜下層剥離術 (endoscopic submucosal dissection : ESD)について

消化器内科 小林 哲

 

厚生労働省によると男性の平均寿命は 79.44 年、女性の平均寿命は 85.90 年となっています。医療の発展により平均寿命は延長していますが、依然として、悪性新生物(癌)は死因のトップを占めています。そのうち胃癌は男性2位、女性3位となっています。
近年胃癌での死亡は減少傾向ですが、それには健康診断の普及などによる検査機会の増加、また内視鏡機器の発達により病変の早期発見が可能となってきたことも一つの要因と思われます。
消化管、特に胃や大腸は早期に病気が発見できれば、内視鏡で治療できる可能性が高いです。
そこで今回は、胃癌に対する内視鏡治療についてお話しさせていただきたいと思います。

 

内視鏡治療が適応になる胃癌は、早期胃癌すなわち癌の進展が粘膜層、粘膜下層にとどまっている状態の癌です。
胃壁の構造は胃の内側から粘膜層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜となっています。
従来、早期胃癌に対する内視鏡治療は内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection : EMR)が主体でした。
EMR とは、病変部の粘膜下層に液体を注入し、病変部にスネア(銅線の輪)をかけて高周波で切開する方法です。
EMR は簡便な方法で小病変には有効ですが、大きな病変を一括で切除するには限界がありました。
そこで 1990 年代の後半に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が開発され、現在ではこの治療が主体となっています。
胃壁の構造

ESD の適応となる病変は転移の危険がほとんどない早期胃癌です。
絶対適応病変は 2cm 以下で肉眼的に粘膜内にとどまると思われる分化型の癌、肉眼型は問わないが潰瘍を合併しない病変とされています。また、相対的な適応として、粘膜下層に軽度浸潤した癌も含まれます。

 

具体的な ESD の方法をシェーマで示します。
①病変の周囲にマーキングします。
②病変部の粘膜下層にヒアルロン酸ナトリウム、グリセオールなどの液体を注入し、病変部を浮かせます。
③病変周囲を高周波ナイフで切開します。
④切開部の粘膜下層を高周波ナイフで剥離し、病変を切り取ります。
ESDの手順

長時間となることが多い治療ですので、鎮静剤を使いながら、場合によっては全身麻酔をかけ、手術室で治療を行うこともあります。
合併症には出血、穿孔(胃に穴が開く)などがあります。稀に合併症によって開腹手術が必要となることもあります。
通常であれば 1 週間ほどの入院で治療は終了します。ただし病理検査の結果、予想よりも病変が深い場合には後日外科手術が必要となることもあります。

 

また、胃癌の発生にはヘリコバクターピロリという細菌の感染が主な原因の一つといわれており、感染早期での胃粘膜萎縮が進行していない段階の除菌治療が重要とされています。
胃癌予防にはピロリ菌の除菌治療が、胃癌の早期発見には定期的な内視鏡検査が重要と思われます。

 

当院では、食道、大腸を含めて内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に積極的に取り組んでいますので、お気軽に相談ください。

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