リハビリテーションという言葉は、最近よく耳にするようになりましたが、初めて用いられたのは、中世ヨーロッパでキリスト教カトリック教会から破門された者が再び復帰することを意味しました。
また、「身分・地位の回復」「破門の取り消し」など。近代では「無罪の罪の取り消し」「名誉の回復」「復権」、現代では「犯罪者の社会復帰」「政治家の政界復帰」など広い意味で一般用語として現に使われています。すなわち、「権利・資格・名誉の回復」です。
語源となるラテン語のrehabilitareという言葉は、re-再び、habilis-人間にふさわしい、tare-~の状態にする、すなわち「再び人間らしい状態にする」という意味です。
近年、傷病者の機能回復訓練という用いられ方が優位になっていますが、その根本は社会復帰という意味です。
辞典によると、復職・復権・名誉回復・身のあかし・社会復帰・更生とあります。
漢字圏での用語としては、台湾では復康・復健、中国では康復、韓国では再活と、本来の意味を良く表していると思います。
しかし、わが国ではなぜかカタカナで「リハビリテーション」と広まってしまい、意味が良く解らなくなってしまっているのが現状ではないでしょうか?
少し堅くなりますが、世界やわが国ではどのように定義されているかをみてみますと
リハビリテーションとは、「医学的、社会的、教育的、職業的手段を組み合わせ、かつ相互に調整して、訓練あるいは再訓練する ことによって、障害者の機能的能力を可能な最高レベルに達せしめること」である、とされています。
リハビリテーションとは障害者が一人の人間として、その障害にもかかわらず人間らしく生きることが出来るようにするための技術及び社会的、政策的対応の総合的体系であり、単に運動障害の機能回復訓練の部分だけを言うのではない、とされています。
このように、広義のリハビリテーションとは、決して医療だけが関わるものではありません。心身に一時的あるいは永続的な障害を抱えた方が、実際に生活する場面に関わるすべての方たち、例えばご家族、ご近所の方、学生さんであれば学校関係者、仕事をされている方であれば職場関係者、趣味活動をされている方であればサークルの仲間、在宅療養であれば福祉関係の方、町並みの問題であれば行政職が、広い意味でのリハビリテーションスタッフになります。
これらの中で特に、傷病により何らかの生活障害を抱えた方が、元の生活に戻るまでの医療場面でチームを組むのが医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなどのスタッフになります。いわゆる(狭義の)リハビリテーション(医学的リハビリテーション)チームです。
広義のリハビリテーションは、WHOの定義のように医学的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、職業的リハビリテーション、社会的リハビリテーションに分類されます。
患者様の心身の障害の状態を把握する方法として、ICIDH(International Classification of Impairment Disability Handicap)という方法があります。
医療場面、特に急性期の医療場面では、ICIDHの手法を用いて機能障害、能力障害、社会的不利という3つの段階構造で状態を把握しようというものです。ICIDHを用いて状態を把握し、いかに機能障害を改善させ、能力障害、社会的不利を低減・克服するかに力点が置かれています。
日本における医学的リハビリテーションには、内科的な薬や外科的な手術の前後から関わり、患者様の状態を改善するための手段の一つとして行う場合と、治療が終了した後に何らかの心身の障害を有するときに、その障害を克服しようとする場合があります。
そのための手段として、一般的に理学療法、作業療法、言語聴覚療法などがあります。