外科 伊從 敬二
近年、血管外科領域では低侵襲な治療として血管内治療が注目されています。
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術はその一つで、自己拡張性のある金属ステントが縫い付けられた人工血管を経カテーテル的に大動脈瘤の前後におよぶ範囲で大動脈内に留置する方法です。
腹部ステントグラフトは2007年1月に特定保険医療材料として認可され、これまで行なわれてきた開腹手術にかわる低侵襲な術式として全国に普及しました。
本術式は開腹既往のある症例でも腹腔内の癒着などの影響を受けずに治療が行なえ、高齢者などのハイリスク症例に対しても治療が可能です。
当院でも患者様のニーズに応えるため2010年10月に施設認定を受けて本術式の実施を開始しました。
当初は血管撮影室で治療を開始しましたが、通常の血管内治療と異なり外科的手術手技を伴うため手術室で行なう方がより安全と言えます。
そこで2012年4月に当院では、フローティング式イメージングテーブル(瑞穂医科工業株式会社)、デジタル・モバイル・イメージングシステム(OEC9900 Elite:GEヘルスケアジャパン)、造影剤注入装置(Rempress:株式会社根本杏林堂)を購入して、血管造影室に近い環境を手術室に整えました。
腹部大動脈瘤に対しステントグラフトを留置したイメージです。 血管造影装置で確認しながら、そけい部(太もも付け根の内側)の血管からカテーテルによって患部までステントグラフトを送り留置するため、細心の注意と高度な技術を要します。(注:編集部解説) |
これによりステントグラフト内挿術がより安全にできるようになりました。
また、設備の導入により、従来の血管外科手術と血管内治療を組み合わせた血管外科ハイブリット手術もより安全に行えるようになりました。
今後さらに新しい医療機器や器具が登場することで、血管外科領域、特に血管内治療の技術はさらに進歩すると考えられます。
当院でもこうした治療を積極的に取り入れて最新の治療が提供できるよう努力していきたいと考えています。